僕の天使マリゑんぬ

もうどこへも行かないと約束して 僕を見つめていて

(観た人向け)映画「ミッドサマー」から思ったこと

「サイコスリラー」「ホラーと映像美」などとSNS上で騒がれていたのだけは知っていましたが、よくわからないまま妹に誘われてディレクターズカット版(まさかの3時間)を見てきました。あまりレビューも得意でなく、そんなに映画を観ているわけでもないのですが思ったこともあったので、記事にします。

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鑑賞後の自分の気持ちをまとめると「クソ映画とは言わない、2,000円分の価値はあったと感じるが、もう二度と観たくない」です。

※ここ数年で「クソ映画」と思ったのは、「打ち上げ花火 下から見るか?横から見るか?」と「おっさんズラブ THE MOVIE」の2本です。好きな人いたらごめんなさい。

映画.comよりミッドサマーのあらすじ。

不慮の事故により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。


公式による考察ページというものがありました。言葉の意味や伏線等説明されていて参考になります。

観た人限定完全解析ページ|映画『ミッドサマー』 絶賛公開中

1. 冒頭のグロシーンに思いっきりひっぱられた3時間

ミッドサマーの舞台「ホルガ村」では人々の人生を四季と同じと考え、18歳ごとに季節が移り替わります。(18歳までは春、村でうらうらしく過ごす。36歳までは夏、村の外に出て学ぶ、54歳までは秋で村での仕事にまい進するとか言っていたような…)72歳になり、冬を終えた村の住人は、他の住人が見守る中、自ら高台より飛び降りその命を絶ちます。
主人公(ダニ)たちが村に招かれた次の日に見た儀式がコレだったので、ダニを含むホルガ村外より見学に来た人たちはドン引き。「帰る」と泣きわめく人も。

儀式のシーンは丁寧に描写されており、2人の老いた男女が飛び降りていたシーンは非常に鮮烈でした。飛び降りる先には岩の台座があり、最初に飛び降りたおばあさんは体の前面を強く打ち、顔の肉はぐちゃぐちゃの血まみれになり即死します。次に飛び降りたおじいさんはかつて「ベニスに死す」に出演していた永遠の美少年ビョルン・アンドレセンなのですがそれはさておき、飛び降りに失敗して脚だけがポッキリ折れてしまい、もがいているところを村人に頭をハンマーで打ち砕かれ絶命します。

ここ、私は思い起こすだけでもオエーップとなるのですが、他の方のレビューを見ると「そこまでグロくない」とか「グロシーンは人形っぽい」みたいなこと書いててみんなすごいね!?と驚いています。
このシーンはダニにも強いトラウマを植え付け(老人たちの死により死んだ両親と妹のことを思い出しているのでトラウマにトラウマを重ねているような感じ)、その後もフラッシュバックの映像として何度か思い起こさせてくるのもキツかったです。

まぁ映像なので、映像なので…架空のキャラクターだし…と思いこもうとしていたのですが、それでも人が死んじゃうシーンはきっつい。これで映画のずっと3時間ひっぱられました。
自分や親しい人があんな風な事故に巻き込まれたりしたら?と考えるとゾッとします。ていうかもう文章打ちながら今泣きそうです。

私の父親が人の死に直面する仕事をしています。職業病なのか人が死ぬところを見すぎていて「母(私の祖母)が死んでも泣けないかもしれない」と自分で自分を心配していました。(でも大切に飼っていたうさぎちゃんが死んだときは号泣してた)そんな父がよく言っているのが「今の社会は人の死を隠すようになった」で、一度自殺している人間でも見てみたら、「自分は首吊りや飛び降りはやめよう…」と思えるくらい、自ら命を絶った人間の姿はおぞましいものなのだそうです。
その事実をミッドサマーのあのシーンで突き付けられたような気がしました。えっそういう思考になる?って思うかもしれませんが、飛び降りとかはやめよう…あと車にひかれないように交通ルール気を付けよう…と強く心に誓いました。

実は私はこのミッドサマーを観て気分が悪くなることを見越して、お口直しとしてディズニーの「リトル・マーメイド」を購入していました。ですが「今、人の死に直面している(映画やけど)のに、ディズニーのハッピーな世界に逃げてもいいのか!?」とすぐに観ることを踏みとどまりました。

ですがやっぱり文章にしてて気持ち悪くなったので、リトル・マーメイドは今日夜観ます。

2. 研究活動と倫理について

※まりゑんぬは軽い気持ちで大学院に入り研究活動(もはやごっこ)をしたところ、「こんなに頭が悪いとは」と教授に言われ、泣きながら修士論文を書き命からがら修了できたカス院生です。

ダニの恋人であるクリスチャンと友人のジョシュは、民俗学を研究している大学院生で(ダニは心理学専攻の大学院生)、ダニたちがこの村から出られない理由もクリスチャンとジョシュがこの村を研究対象(ジョシュは「ヨーロッパの?夏至の祭り」)にしているからでした。

クリスチャンは上記の老人飛び降り儀式の強烈さに「これはウケる」と思ったのか、何もテーマが決まっていないままこの村に来たのですが、この村を研究するためにしっかり準備してきたジョシュの前に対し「俺もこの村を研究テーマにするわ」と宣言します。
通常、フィールド調査というものは先行研究を洗った後に仮説(テーマ)を組み立てた研究者が現地に入っていきその仮説の立証を行うものなのですが、人類学・民俗学研究に関しては「現場でテーマを見つける」手法を取ることは少なくありません。だからクリスチャンのテーマ作りは非常に浅はかであるとは言えアリな手法だと考えます。

※まりゑんぬは軽い気持ちで大学院に入り研究活動(もはやごっこ)をしたところ、「こんなに頭が悪いとは」と教授に言われ、泣きながら修士論文を書き命からがら修了できたカス院生です。

とは言え、クリスチャンは多少はジョシュに対して申し訳なさそうにふるまうくらいはすべきだ!と思いました。あと電子データベース検索ができない大学院生ってマジでヤバい。老後暇だからとアラ還で大学院入ってきて周囲の若い大学院生と思い切りズレた振る舞いをする迷惑な社会人院生のそれじゃん。

一方、ジョシュは住民との会話の際には必ずフィールドノートを取り出し、質問も的確で真剣に研究をする姿が見て感じられました。しかしその真剣さやクリスチャンのクソっぷりにイライラしたのか、村の聖典で「写真撮るとか絶対ダメ」と言われていた書籍の中身をこっそり盗撮しようとしてしまいました。
これが逆鱗に触れたのか?そもそもホルガ村の住民は最初からジョシュたちを殺すつもりだったのか?ジョシュは殺され生贄にされてしまいます。

フィールドワークを行う研究者は、そこに暮らす人々とラポール(信頼関係)を形成する必要があります。住民たちの「よそむけ」の説明は民俗学においては「よそむけ」の記述となるに過ぎません(「よそむき」と「真実」の研究はあるけど)。そのため、フィールドワークの期間は、住民たちの慣習を中から見て記述できるようになるためなので、数年となることもザラのようです。
ラポール形成には「やめろ」と言われていることはやらない、「居させてもらっている」自分の立場を危うくし、「よそもの」とされるのは避けなければいけません。このあたりをジョシュもしっかり理解しとけばあんなことにはならなかったのでは…と思うと同時にまぁ最初っから殺される予定だった可能性も高いことは否めない。
真面目に研究していたほうがより哀れだったのであんくらい愚かなことやってくれてよかったのかもしれない。

また、わたし自身も人類学をかじっていた身として、「住民の倫理観と自分たちが持っている倫理観」のズレは絶対に発生するものであり、そこでフィールドを拒絶してはならないと考えていたので、ジョシュやクリスチャンが上記の儀式について言っていたことはおおむね同意だったのですが、実際フィールド調査中に人が飛び降りて「これがうちの慣習だから」「喜びであり悲しみだから」と説明されてもオエーップって絶対なると思います。

※まりゑんぬは軽い気持ちで大学院に入り研究活動(もはやごっこ)をしたところ、「こんなに頭が悪いとは」と教授に言われ、泣きながら修士論文を書き命からがら修了できたカス院生です。

※確かに自分は「カス院生」ではあったものの、研究活動を行った3年間は非常に有意義で素敵な経験と出会いがあり、自分の能力に真剣に向き合えたかけがえのない時間でした。

3. 薬物使用について

私の「人生のうちでやってみたいことリスト」のうち、「薬物をちょっとやってみる」があるのですが、リスク(変な集団に連れて行かされて最終的に燃やされるとかね)もあるなと普通に怖くなりました。

4. セックスシーン

色々言われていますが、私は普通に「エッロ!」と思いました。この映画でよく言われている「映像美」を私が最も強く感じたのはここでした。(エロいのが好きなだけかも)

…好き勝手に書きました。たくさんの人が考察していますがそこまで難しい映画ではないのでは。いろいろと伏線は散らばっているもののどちらかとわかりやすい映画なのではと思います。公式考察サイトに「もう一度どうぞ!」と書かれてありましたがもう二度と観たくありません…。

は~、リトル・マーメイド観よ。